おもてなし
粋月が選ばれる4つの理由
あるお客様の後宿談より抜粋
『う〜む?(こんなのはじめて!)』 本陣粋月の看板「山野草料理」との出会いは、 その場の空気さえ変えた。 大皿の上に「まるで小花」のように置かれた小皿に、数々 の「食べた経験の無いもの」が所狭しと盛られているのだ。 そんな未知との遭遇に、戸惑いと緊張が全身を駆け巡る。 その戸惑いの一方で、 『けれんみのない色合いは綺麗やな〜。』 女将に促され、少し困惑したままお箸をのばす。 『うまい』と同時に『これは何?』 初めてこの料理を口にしたときの「正直な感想」だ。けっして優しいとはいえない食感や天然のほのかな苦味の中に、自然の旨味やわずかな甘みを感じる。自然の風味を活かしつつ、過剰に取り繕うところがない。ちょっと昔に味わった懐かしさが甦る。そんなノスタルジックな気持ちになり、自然と心も落ち着きを取り戻す。 それでも、この食材は分からない。 『ウワバミソウですよ。』空気を察したかのように、傍の女将が教えてくれた。 恥ずかしながら、その名を聞いてもその正体を想像できない。 『もう考えるのはよそう。』 それまで高負荷で稼動していた頭脳回路のモーターが、静かに回転速度を落とし始めた。気がつけば、普段早喰いの私がゆっくりと何度も噛み締めている。ひと口ごとに「身体に優しい」を実感する。 『だんだん楽しくなってきた。』 しかも、お酒の肴にも最適だ。 美味しい料理をいただくと、その場の雰囲気も明るくなっていく。普段口数の少ない同伴者が、やたら女将と楽しそうにしゃべっている。 その間にも、私の目の前には次から次へと新たな料理が並べられていく。 「山野草料理」だけでも充分お腹一杯なのに、美味しそうな「お造りの盛り合わせ」や、 いい香りの「お魚の煮物や焼き物」、揚げたての「天ぷら」が次から次へと。 『こんな量、誰が食べるん?』 同意を求めるため「ふっ」と顔を上げると、同伴者はまた女将としゃべりながら、それでも次々とお皿を空けている。私は負けじとばかり、膨れかけたお腹を揺すりながら新たなお皿にお箸を伸ばしていた・・・。 |
一日中穏やかな天候に恵まれることが少ない北近畿の日本海沿岸、 特に冬場には大雪や吹雪の日も少なくない。
そんな環境も何処吹く風、「本陣粋月」の女将は日中「ほとんどと言っていいぐらい」宿にはいない。 山に入り、崖を下り藪に分け入り、沢を飛び越え、時にはせせらぎの中で、嬉々として山野草を摘んでいるのだ。 『自然は、刻一刻変化してるのよ。今日しか収穫できないものがあるの。』 いつもの女将の口癖。 あなたはご存知ですか? ヤブカンゾウ・ギシギシ・アマドコロ・ギボウシ・ツルナ・イグチ・・・。 女将が、日々コツコツと摘んでくる山野草たち。一見しただけでは、ただの草にしか見えないものが、食材となる。 しかし、1ヶ所での収穫はごく少量。 『自然の生態系を壊さないように』との配慮のためだ。 |
何を隠そう、女将は約10年前ガンに侵された。
手術を繰り返しながらの長い闘病期間に考えたのが、 「食べることの大切さ」。 『人工的に栽培されたものに頼らず、自然の力を取り込むような食生活がしたい。宿の食事も変えなければ。』そんな女将を後押ししてくれたのが、本編後半にも登場する「西途謹吾さん」。 『じゃ、山を手本にすればいい。365日、山に入って山菜や野草中心の料理を作ればいい。応援するから。』って。 山に入って分かった。『山にはエネルギーが満ち溢れているの。森林や植物、またそこに暮らす動物たち、その空気にさえ、すべてに原始的な生命力っていうのかしら、尊厳さを感じることができるの。だから疲れているときほど、山に入りたくなるのよ。』 現代社会に疲れて、精神的にも参っている人も多いと聞く。 そんな人にこそ、『一緒に山に入ってエネルギーを感じてほしい。私も随分、助けてもらっているから。』 女将の本音だ。 |
本陣粋月でお出しするお米や野菜は、大将や女将が惚れ込んだ契約農家で栽培・収穫されたモノが中心です。
お米は、「丹後産 コシヒカリ」。このブランド米は、西日本で唯一3年連続「特A※1」を獲得した地元の美味しいお米です。 しかも、常時最善のご飯を食べていただくために、大将は精米機までも購入。お米の状態やその時々の気候またお客様に応じて精米度まで調整しています。 また、精米時の「ヌカ」は畑に撒いたり、「ヌカ床」にしてお漬物を作ったり。 『無駄な物など、一切無い』これが本陣粋月のスタンダードです。 野菜は、有機野菜が中心。 その契約農家のひとりが、兵庫県豊岡市で20年以上にわたり「無農薬・無肥料・無除草剤」農法に取り組む、西途謹吾さん。 女将とは、『キンちゃん』『ワカちゃん』と呼び合う仲で、息もぴったり。 |
※1「特A」:財)日本穀物検定協会が実施している専門パネラーによる食味ランキング。最高位が「特に良好」な「特A」。 平成24年産米については、128産地品種について食味試験を実施しました。